59歳で癌(がん)になりました

がんサバイバーのHIROです。
2024年12月11日、59歳で癌(がん)と診断されました。ステージ4の前立腺がんです。
それまでの症状、治療、手術のこと、そしてこのブログを始めた2025年9月時点までの病状を時系列で説明します。
【2024年5月26日】はじめての頻尿
がんと診断される約半年前に人生で初めての頻尿を体験しました。
知り合いと飲みに行っている時でした。頻繁におしっこに行きたくなり、何度もトイレに行きました。「あれ、おかしいな。どうしたんだそう」と思いましたが、何度も席を立つのが恥ずかして、自分の体調を心配する余裕がありませんでした。10分も経たずにまた行きたくなることもありましたし、行っても出なかったりということもありました。
いわゆる頻尿です。痛みなどは全くありませんでした。
【2024年10月3日】突然背中が痛くなりました

突然、右の肩甲骨が痛くなりました。元々腰痛がありましたし、痛風や脚の疲労骨折も経験していましたので、よくある痛みだろうと思って放置していました。
痛みはかなり強くなり、日によっては左の肩甲骨が痛くなったり、ど真ん中(背骨の上)が痛くなったりと場所が変わることもありました。
あまりに痛みが強くなったので、近所の整形外科クリニックで診てもらったところ、リハビリを勧められ、週1回通いましたが、痛みはなくなりませんでした。
【2024年11月】肺のCT検査を受けました

整形外科クリニックのリハビリは効果がなく、今度は徐々に体重が落ち始めました。
その様子を見て、妻が内科で診てもらうことを勧めてくれ、近所の内科クリニックへ行ってみました。
痛みのある肩甲骨に近い臓器は肺だからということで、医師からは肺のCT検査を勧められました。そのクリニックではCT検査はできないため、少し離れた公立の医療センターを予約してくれました。
後日、医療センターで肺のCT検査を受けました。そして、検査結果(画像)を持参して、再度内科クリニックを訪れたところ、肺に無数の小さい癌細胞らしくものがあると言われました。
総合病院で診察を受けるように言われ、紹介状を書いてもらいました。
【2024年12月11日】癌と診断されました(PSA=2132)

紹介状を持って公立の総合病院へ行き、診察や血液検査などを受けたところ、前立腺がんであることがわかりました。
しかも、全身の骨に転移していて、かなり進行していると説明されました。骨だけでなく、肺にも転移していたので、事前のCT画像に映っていたのです。
PSAというがんマーカーの値が2132で、上限値(4)の500倍以上と医師から教えてもらいましたが、あまり意味が理解できませんでした。
【2024年12月12日】緊急入院

すぐに治療が必要とのことで、勧められるままに翌日入院しました。
医師から背中の痛みの原因と治療方法の説明を受けました。背中の痛みは、がんの腫瘍が胸椎内部の神経を圧迫しているのが原因で、このまま圧迫が続くと、下半身の神経麻痺が起こる可能性があるとのこと。
直前の12月8日頃から下半身がふらついていましたので、かなり切迫した状況にあることがわかりました。
【2024年12月12日】治療の優先順位について
骨転移が進んでいたため、私の病状は複雑でした。背骨以外に左大腿骨にもかなり転移していたので、大きくは以下の3か所の治療をする必要がありました。
① 前立腺がん(原発巣)
② 転移先の背骨(神経を圧迫)
③ 転移先の左大腿骨(腫瘍で骨がスカスカ)
前立腺がんは泌尿器科が担当です。泌尿器科の医師いわく、「本来はすぐに前立腺の治療を開始したいが、背骨の神経の圧迫を止めるのが優先」とのことで、背骨(第3胸椎)の一部を切除して圧迫を回避する手術を勧められました。
妻と相談し、下半身麻痺を回避するために背骨の手術をしてもらうことを選択しました。
左大腿骨は癌の腫瘍でスカスカになっていて、こちらも治療を検討しないといけない状況でしたが、取り急ぎ、車いすを使うことで大腿骨への負担を軽減しつつ様子を見ることにしました。
泌尿器科、整形外科の医師が集まって治療方針やスケジュールを検討してくれました。その結果、翌日に背中の手術が可能ということになりました。公立病院ですぐに手術ができるなんて、本当に運が良かってです。
【2024年12月12日】ホルモン治療(ゴナックス)開始
背中の手術を優先すると書きましたが、ホルモン治療は開始できるとのことで、ゴナックスを注射してもらいました。
話が複雑でわかりにくくてすみません。💦
前立腺がんの治療については、当記事で後述します。
【2024年12月13日】第3胸椎切除手術

背中を切開して、第3胸椎の一部(背骨側)を切除する手術を受けました。なくなった骨を補強するため、チタン製のブリッジをボルトで上下の骨に締め付けました。
約4時間の手術は無事に成功し、全身麻酔から目覚めました。妻に「頑張ったね」と声を掛けられ、終わったことを知らされました。体中にたくさんの管が付いていました。
前立腺がんの治療について
私が経験した前立腺がんの治療を一般的な情報とともにまとめます。
ホルモン注射「ゴナックス」
前立腺がんはホルモン依存の癌で、男性だけがなります。
治療としては男性ホルモンを抑える注射を使うのが最も一般的で、ほとんどの患者に効果が見込めるということでした。私としては疑問や異論がなく、ゴナックスというホルモン注射を月に1回続けることになりました。
👉 ゴナックス(一般名:デガレリクス)
前立腺がんの原因になる男性ホルモン(テストステロン)を抑える薬で、月1回の皮下注射で投与します。前立腺がんのホルモン療法の第一選択肢として使われることが多いようです。
注射部位が腫れて痛むことが多いそうですが、私はごく軽度でした。
抗がん剤(化学療法)
私の場合、癌が進行していたので、ホルモン注射だけでは抑えきれない可能性があり、抗がん剤の投与も主治医が提案してくれました。
但し、前立腺がんの場合は飲み薬もあるので、組み合わせるのが良いのではないかという見解でした。飲み薬から初めて、タイミングを見て抗がん剤を投与するという計画です。
抗がん剤の使用については、少し考えさせてほしいと伝えました。抗がん剤の体への影響はある程度知っていたので、ちゃんと考えたいと思ったからです。
妻は私以上に抗がん剤についての知識がありましたので、意見を言ってくれましたし、本も渡してくれました。但し、妻は「最終的には自分で判断してほしい」というスタンスでした。
本を読み、インターネットで調べ、慎重によく考えた結果「抗がん剤は使わない」という結論に至り、主治医に伝えました。主治医は「わかりました」と言って、抗がん剤(化学療法)を使わない前提の飲み薬「イクスタンジ」を処方する旨を説明してくれました。
飲み薬「イクスタンジ」
前項で説明した経緯で、イクスタンジという飲み薬を投与することしました。
副作用が極めて少なく、抗がん剤(化学療法)のように、吐き気や脱毛の可能性もないということでした。
実際、副作用は全くありませんでした。
👉 イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)
前立腺がん細胞が男性ホルモンに反応するのをブロックする薬で、ホルモン治療や骨の治療と併用されることが多いそうです。
骨を回復させる点滴「ゾメタ」
左大腿骨の広範囲に癌が転移していて、荷重を避けるために車いすを使うことになったと前述しました。
前立腺がんの治療ではないのですが、関連した内容ですので、ここで紹介させてもらいます。
体重をかけるとボキッと折れる可能性があり、もし折れたら一生歩けなくなるとのことでした。すでに大腿部に痛みを感じていて、恐怖心もあったので、勧めてもらった治療を受けることにしました。
腫瘍が広がってスカスカになった大腿骨は、いわゆる骨粗しょう症のような状態で、骨を強化してもとに戻さないとずっと車いす生活です。
👉 ゾメタ(一般名:ゾレドロン酸)
癌細胞の骨転移による骨の破壊を抑える薬で、骨折や痛みのリスクを軽減してくれます。骨の代謝を促進して、再生の可能性を高めてくれます。
治療後のQOL(Quality of Life)向上のために、使ってもらうことにしました。
【2025年3月5日】PSAが2以下に下がり「寛解」
治療の効果があり、PSAが順調に下がりました。
PSA
2024年12月11日 3132.5
2025年1月8日 67.8
2025年2月5日 2.3
2025年3月5日 0.33
健常者の場合PSAの上限値は「4」ですが、私のように一旦上がってしまったがん患者は「2」以下に下げる必要があるということでした。
大変ありがたいことに約3ヶ月で「0.33」まで抑えることができました。2月5日の2.3と3月5日の0.33の時は、嬉しくて涙ぐんでしまいました。
骨シンチ(骨転移を確認する検査)やMRI検査の結果などからも、前立腺がんの症状が治まっているということで、いわゆる「寛解」という状態になりました。但し、がん細胞は体のどこかに残ってる可能性は高いので、引き続き同様の治療を続けます。
【2025年5月28日】癌細胞は見当たらない(CT検査)

すでに寛解という診断でしたが、治療と検査は続けており、久しぶりに全身のCT検査を受けることになりました。
2024年12月の段階で転移していた肺はとてもきれいで、がん細胞は見られないという嬉しい結果でした。元々転移が認められなかった肝臓、腎臓もきれいで癌細胞はないとのことで、一安心でした。
前立腺は臓器の特性上、CTで完全に目視できないそうですが、PSAの数値などから、がん細胞はないだろうというのが主治医の見解でした。
但し、引き続き治療は続けることで合意しました。
【2025年6月4日】ホルモン注射・飲み薬を変更
良好な検査結果が続き、PSAが0.043まで下がったこともあり、主治医と相談して、ホルモン注射と飲み薬の強度を下げることにしました。
2025年5月7日の診察時に、治療強度を下げる選択肢もあると主治医が言ってくれていたので、翌月に私から相談し、実現しました。
私は基本的に「薬も異物」と捉えているので、どうしても頼らないといけない状態を抜けたら、やめたり変えたりしたいという考えです。
【2025年9月3日】PSA=0.011
メディアを始めるきっかけになった出来事
ある日、妻の親戚から電話がありました。私が癌から回復したことを知って、どんなことをしたのか聞きたいというご相談でした。癌と長く闘っておられる人です。
その方と面識はありませんでしたが、癌患者さんの気持ちは切実にわかります。「私の体験談でよければ」と断った上で、主に食事療法、水、油のことなどをお伝えし、Youtubeから得た情報を自分でまとめてファイリングしたことなどを説明しました。
この時、「自分の経験が誰かの役に立つかもしれない」と実感し、当メディアを立ち上げることを決心しました。
自分としては、必死に情報を収集して、できることを全部やったに過ぎないと思っていますが、それが他の癌患者さんを助ける情報になるなら、それは伝えていくべきと考えた次第です。
手術の後遺症について
前立腺がんが順調に回復したと紹介してきましたが、背中の手術の後遺症だけは、2025年9月時点でまだ解決していません。
手術跡の神経痛に悩まされています
手術では、背骨に沿って25センチくらい切開しました。大きな手術の部類になるそうです。
胸椎の一部を切除し、補強用にチタンのブリッジ(長さ11cm)を入れて手術は成功しました。但し、背中の筋肉と神経をバッサリ切った影響で術後に神経痛が発生し、なかなか改善しません。
背中が、ピリピリ、ジリジリ、ビリビリして、痺れ、強い凝り、痛みなどを感じます。
なんとか治したいと、整体やピラティスなどに取り組んでいますが、いまだに結構苦しんでいます…。💦
【反省】早期発見の大切さ
癌は良くなったのに転移先の手術跡が治っていないという、珍現象というか、変則的症状に陥っている状況です。
ここで反省を込めて、皆さんにお伝えしたいことは、早期発見の大切さです。私の場合、頻尿や背中の痛みの初期段階でちゃんと検査を受けていたら、背骨への癌転移はここまで進まず、背中の手術を回避することができたはずです。
妻からは、背中の痛みが続いた時点で「何かおかしいから内科を受診した方がいい」と言われていましたが、私はすぐには行きませんでした。その言葉にもっと早く従っていたらと思うと悔やまれます。
自分の経験から、皆さんには気になる症状があったら早めに医療機関へ行って専門医に相談してほしいと思います。また、家族や周りの人のアドバイスに素直に耳を傾けるという姿勢も大切だと思います。
ライター
がんサバイバーHIRO
1965年生まれ/男性 2024年12月に59歳で前立腺がん(ステージ4)が見つかったが、3か月後に寛解。自分の体験談を参考にしてもらおうとメディア運営することを決断しました。治療、症状の経過、検査結果などを公開しています。